第2節 その他の抗告訴訟
第36条 (無効等確認の訴えの原告適格)
無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。
第37条 (不作為の違法確認の訴えの原告適格)
不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。
第37条の2(義務付けの訴えの要件等)
第3条第6項第一号(行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき)に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
3 第1項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項(裁判所の参酌)の規定を準用する。
5 義務付けの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。
第37条の3
第3条第6項第二号(行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請、又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき)に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
3 第1項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第38条第1項(取消訴訟に関する規定の準用)において準用する第12条(裁判所の管轄)の規定にかかわらず、その定めに従う。
一 第1項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え。「不作為型」
二 第1項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え 。「処分拒否型」
4 前項の規定により併合して提起された義務付けの訴え及び同項各号に定める訴えに係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
5 義務付けの訴えが第1項から第3項までに規定する要件に該当する場合において、同項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命ずる判決をする。
6 第4項の規定にかかわらず、裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、第3項各号に定める訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは、当該訴えについてのみ終局判決をすることができる。この場合において、裁判所は、当該訴えについてのみ終局判決をしたときは、当事者の意見を聴いて、当該訴えに係る訴訟手続が完結するまでの間、義務付けの訴えに係る訴訟手続を中止することができる。
7 第1項の義務付けの訴えのうち、行政庁が一定の裁決をすべき旨を命ずることを求めるものは、処分についての審査請求がされた場合において、当該処分に係る処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起することができないときに限り、提起することができる。
第37条の4(差止めの訴えの要件)
差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
3 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項(裁判所の参酌)の規定を準用する。
5 差止めの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。
第37条の5(仮の義務付け及び仮の差止め)
義務付けの訴えの提起があった場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があった場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第25条第5項(執行停止の決定の疎明)から第8項(執行停止の決定に対する即時抗告の執行不停止)まで、第26条(事情変更による執行停止の取消し)から第28条(執行停止等の管轄裁判所)まで及び第33条第1項(取消判決等の拘束力)の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第25条第7項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第26条第1項(事情変更による執行停止の取消し)の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。
第38条 (取消訴訟に関する規定の準用)
第11条(被告適格等)から第13条(関連請求に係る訴訟の移送)まで、第16条(請求の客観的併合)から第19条(原告による請求の追加的併合)まで、第21条(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)から第23条(行政庁の訴訟参加)まで、第24条(職権証拠調べ)、第33条(取消判決等の拘束力)及び第35条(訴訟費用の裁判の効力)の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。
2 第10条第2項(原処分主義)の規定は、処分の無効等確認の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟とを提起することができる場合に、第20条(併合提起の出訴期間)の規定は、処分の無効等確認の訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟に併合して提起する場合に準用する。
3 第23条の2(釈明処分の特則)、第25条(執行停止)から第29条(執行停止に関する規定の準用)まで及び第32条第2項(取消判決等の効力)の規定は、無効等確認の訴えについて準用する。
4 第8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)及び第10条第2項(原処分主義)の規定は、不作為の違法確認の訴えに準用する。